ビクトリーマップ「問われる企業の社会的責任、内部留保は賃上げ・雇用に」大企業110社 ため込み利益90兆円
大企業が労働者の雇用と賃金を犠牲にして積み増ししている内部留保(ため込み利益)。神奈川県内の大企業110社で、総額90兆円を超える規模に。「ビクトリーマップ」で実態を明らかにした県労働組合総連合(神奈川労連・福田裕行議長)は、「大企業は社会的責任として内部留保を労働者の賃金・雇用と下請け企業・関連企業の条件改善に回せ」と訴えています。
1年で4・7兆円増
マップは、神奈川労連が毎年公表しているもの。マップによると、大企業110社の内部留保は、1年間で4兆69億円(4・56%)を増やし、総額91兆8375億円となりました。従業員1人当たりの内部留保額は1972万円で、76万円(4・01%)増えました。
輸送機、化学・医薬品、金融、情報通信、電機、石油・ゴム・ガラスなどの業種で増加。企業別で従業員1人当たりで見ると、東燃ゼネラル石油が最も多くため込み、横浜銀行、東京電力、東京応化工業、ヒロセ電機が続きます(表参照)。
内部留保を増やした企業は88社に及びました。日産自動車(4643億円)が最も増やし、次いで、ブリヂストン(4478億円)、日本電信電話(3721億円)、日本生命保険(2711億円)、損保ジャパン日本興亜(2680億円)、第一三共(2545億円)、日立製作所(2075億円)、旭化成(1836億円)、三菱電機(1630億円)などとなっています。
経常利益は、前回比3049億円(2・81%)減の総額10兆5419億円。110社のうち106社は黒字でした。日本電信電話と日本郵政は、1兆円を超える利益を上げています。
ほんの一部を活用すれば
大企業の内部留保を賃上げに活かせばどれほどの効果があるのでしょうか。
マップは、内部留保のわずか0・86%を活用すれば110社の従業員465万6449人に1万円の賃上げ(ボーナスは夏冬で5カ月)が可能であると指摘しています。2・6%なら3万円の賃上げができるとしています。
仮に県内労働者370万人に1万円の賃上げ(同)をした場合、県内経済への波及効果・生産誘発額は総額5857億円と試算しています。デフレ脱却、経済の好循環にも賃上げこそが有効であることを示しています。
「今年の春闘は、14年の消費税増税や、円安による輸入原材料の値上げなどでの消費者物価の上昇、社会保障の負担増により、特に低所得者は5~6%の賃上げがなければ事実上賃下げになってしまいます」
こう指摘するのは、マップ作成を委託された「かながわ総合政策研究センター・かながわ産業労働調査センター」の岡本一理事です。
「内部留保に課税させたり、一部を活用させ大企業の労働者ばかりでなく、下請・取引単価を引上げさせ、中小企業にも還元させる。国や自治体に中小企業支援策を抜本的に強化させ、すべての労働者が6%以上の賃上げを獲得することが求められています」
◆ビクトリーマップ 国民春闘・神奈川版資料。調査対象は、県内に500人以上の労働者が働き、財務諸表の入手可能な企業。財務諸表が非公開となっている外資系の日本IBM、キャタピラ三菱などは除いています。コンビニ、居酒屋のチェーン店など県内に多数店舗をもつ企業も実態が公表されていないため対象外です。「退職給与引当金」「各種負債性引当金」「資本準備金」「連結剰余金」を内部留保としています。