「ルネサスの大リストラ 運動の成果と教訓を語る」かながわ対策会議事務局長・森英一さん
雇用と地域経済守るを掲げ
半導体大手・ルネサスエレクトロニクスの大リストラとたたかってきた「ルネサスリストラかながわ対策会議」が7月1日、川崎市内で総会を開きました。取り組みの成果と教訓を森英一事務局長に語ってもらいました。
4年間で2万7000人退職
ルネサスは2010年4月、NECエレクトロニクスとルネサステクノロジーが統合して発足しました。
早期退職募集での人員削減や、工場の売却、閉鎖、縮小を繰り返し行い、4年間で約2万7000人を退職させました。これは統合時社員の56%に相当する数です。
政府が9割を出資する官民ファンドの産業革新機構がルネサスへの資金投入を決定した以降、リストラが横行しました。同機構からルネサスに送り込まれた作田久男会長兼最高経営責任者は、労働者に犠牲を強いる施策を強行しました。
退職強要の異常さは際立っています。多くの管理職らを降格・降級させたり、「業務命令」の名の下で10回を超える「面談」を強要するなどしました。
また、人事異動で「事業部付」への配属や派遣会社・パソナテックに出向させるなど、労働者を「追い出し部屋」に追い込んでいます。
早期退職に応じない人は、遠隔地配転を強要しました。
育児・介護休業法では、事業主が労働者を転勤させる場合、育児や介護を行うことが困難となる労働者について、育児、介護の状況に配慮しなければならないとしています。
しかし、ルネサスは「付いて来られない人は早期退職を選択すれば良い」と法を無視する姿勢でした。
無法・違法なリストラとのたたかい
無法・違法なリストラとたたかうため、ルネサスリストラかながわ対策会議が昨年5月に結成されました。
目的は、▽ルネサスのリストラから雇用と地域経済を守る▽玉川事業所(川崎市)、相模原事業所(相模原市)の廃止に反対し、事業所存続を実現する▽企業の社会的責任の履行や、労基法、雇用対策法、育児・介護休業法など現行法の順守を求める―ことです。
私たちはこの間、月例の委員会を開き、職場状況を分析し、工場門前での宣伝行動や行政交渉、労働相談会、仲間増やし、団体交渉などに取り組んできました。
最も力を発揮したのは、宣伝行動です。玉川事業所で19回、相模原事業所と子会社のルネサスシステムデザイン本社(横浜市)で各10回の宣伝を行いました。のべ389人の参加で総数3万596枚の門前ビラを労働者に手渡しました。
また、川崎市、相模原市、川崎北公共職業安定所、相模原公共職業安定所に雇用対策法の履行を求める交渉を各2回行いました。
労働相談会は7回実施し、6人から相談を受け、数人が電機・情報ユニオンに加入しています。
同会議委員でもある大庭裕子市議をはじめ日本共産党川崎市議団は、ルネサスリストラ問題を市議会定例会ごとに取り上げました。
高崎事業所配転の「内示」を撤回
私たちは玉川、相模原両事業所の廃止を止めることはできませんでしたが、貴重な成果を勝ち取りました。
一つは、職場と地域のたたかいを結集し、リストラ反対の運動を継続して展開できたことです。
二つは、リストラ反対の職場世論を作り出せたことです。
三つは、現行法を活用し、労働者を激励するとともに、リストラの違法・無法性を行政機関に告発したことです。
四つは、職場で電機・情報ユニオンの組合員を増やし、たたかう部隊を組織できたこと。新しい組合員は、退職強要への謝罪、処遇改善などを求めて活動しています。
五つは、群馬県の高崎事業所に配転するとの「内示」を撤回させ、労働者の希望地での勤務を実現したことです。
ある女性労働者は、「面談」で、会社に残った場合、高崎に配転させると脅迫されました。これをはねかえすため、団体交渉に取り組み、「内示」の撤回などで合意しました。
玉川、相模原両事業所の廃止、システムデザインの吸収合併で、神奈川県内でのたたかいは集約します。
私たちが勝ち取った運動の前進と成果は今後、各地のたたかいに活かされ発展していくでしょう。県内でも、事業所廃止反対運動をさらに広げていきたいと思います。
写真=取り組みの成果と教訓を確認した総会。あいさつする日本共産党の畑野君枝衆院議員(右端)=7月1日、川崎市
新かながわ 2015年7月19日(第2320)号