「『箱根町は実証実験』と自民県議、企業庁は住民説明会すら断る」神奈川県水道事業の民間開放-箱根地区の包括委託を考える(2)[Sunday Report]

誰のための「水ビジネス」なのか

 誰のための「かながわ水ビジネス」なのか――。こんな問いかけをしたとき、「かながわ水ビジネス」の本当の姿がわかります。

 2013年6月21日の県議会県民企業常任委員会での高橋栄一郎自民党議員の質問と古谷企業庁長の答弁は、あけすけに本音を語っています。

 高橋議員 「この箱根というフィールドは水源から最後の蛇口まで、コンパクトな地域にまとまっていることもあって、実証実験、民間企業のOJT(オンザジョブトレーニング)に適した地域だと思うが」「当初先程の説明では実績を積ませてあげるために(民間に)解放するんだよという話しであった。先般我が会派の代表質問でこの件を取り上げたときも、知事からもそういった経験を積ませるためにやるんだよという答弁があった」。

 古谷企業庁長 「事業全体、水道事業全体を経験できることで、海外へ出て行くときにこれが重要なファクターになる」。「トータルで経験を積んだことがないということから、これが海外に出て行くためのネックになっている。事業経験がないという評価につながってしまう」「包括的に委託して経験をつんでいただく、それが海外の経験につながっていく」。

 「ただ、安全面も大事なので、既に経験を積んでいる人たちで、SPC(特定目的会社)を組んだり、協力企業を入れたりしながらトータルで要件を整えていただく」。

包括委託は海外進出のための実績づくり

 「かながわ水ビジネス」と称して、箱根地区の水源の管理から浄水、配水、給水、料金徴収までトータルな企業庁箱根水道営業所の水道事業を「箱根水道パートナーズ株式会社」に包括的民間委託したのは、海外進出のための実績づくりの「実証実験」だったのです。

共産党の加藤議員「水はライフライン」

 海外視察には参加せず、そのかわり箱根町で聞き取り調査をした共産党の加藤なを子議員は、箱根町の水道事業の包括委託を受けている「箱根水道パートナーズ株式会社」が命の水、ライフラインを管理している責任はあるのかとただしました。

水道法第1条の適用を受けるのかを質問すると、県当局は「適用される」と応えました。つまり「箱根水道パートナーズ株式会社」の第一義的な仕事は、水道法第1条「清浄にして豊富低廉な水の供給を図り、もって公衆衛生の向上と生活環境の改善とに寄与することを目的とする」ことです。企業の海外進出のための実績づくりではないのです。その上、箱根町民にはメリットのないものだったのです。

夏祭りの住民アンケートすら公表せず

 その上で加藤議員は、箱根水道パートナーズ株式会社がこの間、地元の夏祭りで町民からとったアンケート結果の公表を迫りました。県当局は、企業との業務契約外だとしてアンケート内容を把握していないと拒否しました。

加藤議員が「民営化され不安だ」と書いた町民の声を聞いているなどとさらに追及。「包括委託をする前に説明会を求める町民の声があったと聞いているがそれも開催しなかった」とたたみかけました。

 箱根町の企業庁箱根水道営業所の水道事業を民間企業に包括委託する「かながわ水ビジネス」は、水道料金を払っている箱根町民の合意が前提のはずです。なぜなら水道事業は、町民の水道料金で成り立っており、水道法第一条が守られるべきだからです。

 しかし箱根水道パートナーズ株式会社が、海外進出する実績づくりで企業庁箱根水道営業所の事業が包括委託されたという事実を知る箱根町民は今でもほとんどいません。

それはなぜでしょうか。

箱根町民をないがしろに

 県当局は、箱根地区水道事業包括委託についてホームページに掲載した、2回ビラをまき周知徹底したとのべました。しかし、日本共産党の山田和江町議によると、13年8月20日の箱根町議会の全員協議会で町の上下水道温泉課長が包括委託を説明しただけで、町議会に県企業庁が説明したことはありませんでした。

 また、箱根地区水道事業の包括委託に関して箱根町宮城野地区の山田町議が住民代表となって、「安全な水は守られるのか」「赤字になったら撤退するのでは」など素直な住民の疑問を聞きたいと説明会を県企業庁に申し入れましたが「実施しません」という回答でした。

 自民党議員がいう「実証実験」となる箱根町民や町議会には、企業庁も県も「かながわ水ビジネス」を直接説明すらしてこなかったのです。

 加藤議員の質問に県は、「包括委託は全国で初めて。ノウハウを検証しなければいけない。公共と民間の連携について検証を考えている。町民へのアンケートも含めた総合的評価が必要」とはじめて、町民と向き合う姿勢をとらざるをえませんでした。