動きはじめた「がんばれッ!日本国憲法」(1)私たちが憲法を守っていく
振り返って〝あの時〟が今
市民参加型ミュージカル「がんばれッ!日本国憲法」が来年の4月28、29日の公演に向けて動き出しました。「私たちが憲法を守っていく」と呼びかけてきた出演者やスタッフの皆さんを紹介します。
不破 励子さん(77)=横浜市在住=
1937年東京都北区に生まれる。高校卒業後、「東京俳優生活協同組合」(俳協)に入団。1965年結婚後1967年俳協退団。1974年に横浜に転居し、生協活動に参加。新日本婦人の会平和部、旭区原水協理事、消費税をなくす旭区の会世話人、旭区九条の会事務局、全日本年金者組合横浜旭支部会員。
とにかく戦争は嫌
「戦中に叔父が3歳のいとこを残して出征して戦死したんです。それからのいとこの境遇をみていて本当にかわいそうで、戦争は絶対に嫌だという思いが深く刻まれました。自分が結婚して子どもが出来た時、夫は子どもの顔を見たさにさっさと仕事を終えて帰ってきてかわいがりました。そんな時に、いとこのことを思い出したんです。この子をおいて夫に赤紙(戦前の召集令状)が来たらどうしよう、絶対に戦争だけは嫌だ、そして子どもを兵隊にしたくない、そう強く思いました」
戦争に反対するデモや集会には子どもを背負ってでも参加したいと思うようになったという不破さんの人生は、現在まで反戦の思いが貫かれています。
生意気と父親に大学進学を反対され
「戦前、父は大政翼賛会の院外団に入っていて、いわゆる右翼と言われる人でした。戦後、あの戦争は悪かったと周りの大人たちが言った時、私は父に、そんな悪い戦争なんだったら、しなければ良かったじゃないか、と言ったんです。そうしたら父が、戦争は必要悪だ、戦争のお陰で科学が進歩する、というんです。私はその時に、あんなにたくさんの人の命が奪われるくらいだったら科学なんて進歩しなくていい、と言ったら父は黙りました。こんなことを言う私を、父は小憎らしいと思っていたみたいです」
時事問題が好きな子どもで、政治的な論争を父親に挑む不破さんには一つ心残りがあります。
「なんで戦争を止めなかったんだ、と父に言った時に、父はしばらく黙っていましたが、“あの時”というのが確かにあった、とつぶやいたのを覚えています。今思うとそれがどういう時だったのか聞いておけば良かったと悔やまれます」
高校1年の時の進路相談で大学進学を希望したところ、父親に「オマエのような生意気な娘が大学なんて」と猛反対され進学を断念しました。
先輩の誘いで演劇の世界へ
小学校の頃から学芸会の劇が大好きで、演劇部に入っていた不破さんは高校卒業後、東京俳優生活協同組合に入団し、新劇の俳優として活動しましたが、結婚後は俳協を退団、横浜に転居して生協活動に参加しました。
「夫は芝居に理解のある人で、芝居を続けても良いと言ってくれたのですが、子どもを自分の手で育てたいと思って芝居は辞めました。横浜に引っ越してきてからは、生協活動を通じていい先輩に巡り会い、勉強会に行ったり、憲法劇を観るようになりました」
6回目の1992年から憲法劇に参加するようになった不破さんにとって、新劇とは全く違う憲法劇の作り方はとても新鮮でした。
<左の写真>従軍慰安婦を演じる不破さん=1992年、憲法劇で
最初の憲法劇の舞台を踏んだ不破さんに、演出の濱田重行さんから二回目の誘いがありました。
「濱田さんは戦争反対を子ども達が訴えるより、戦争経験者が訴える方がいいからこれからも出て欲しいといわれたので、続けていたらハマってしまいました」
以来、憲法劇は、不破さんのライフワークになりました。
「神奈川の憲法劇の良さのひとつは子ども達です。いきなり舞台に上げるのではなく、探検隊V2と名付けて皇居や基地見学をしたり、その時のテーマなどを丁寧にレクチャーして劇の意味を理解させます。学校では居場所のない子どもも活き活きとしていて、劇団は塾のような学びの場でもあります。その子ども達が暗転の時に私の手を引いてくれたり、とてもかわいい。憲法劇って良いなあって思います」
今この時代に憲法劇の再開は意義深いことです。
不破さんは「年齢のこともあって、どういう形で参加できるか分からない」といいますが、不破さんの舞台姿を楽しみにしている方も多いと思います。
来年4月28、29日の青少年センターでの憲法劇。6年ぶりの再始動に期待が膨らみます。
「がんばれッ!日本国憲法」は1987年、憲法施行40周年を記念して公演された市民参加型ミュージカルです。青年法律家協会(青法協)神奈川支部が呼びかけ、実行委員会をつくり、毎年5月3日の憲法記念日前後に県立青少年センターで公演され、2009年まで続きました。オリジナルの台本、歌、踊りで市民数十人が舞台に上がり憲法の大切さを訴えています。しばらく休止していたのですが、2016年4月28、29日の公演めざし活動を再開しています。
新かながわ 2015年9月20日(第2328)号