2015春闘ビクトリーマップ「大企業の内部留保、3兆9000億円増。賃上げ・雇用の改善に」
神奈川県内の大企業が労働者の雇用と賃金を犠牲にして、内部留保(ため込み利益)を積み増ししています。神奈川県労働組合総連合(神奈川労連)が1月にまとめた「国民春闘・神奈川版資料(ビクトリーマップ)」で明らかになりました。
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神奈川労連は、春闘で労働条件の改善を勝ち取るために毎年、ビクトリーマップを発表。「かながわ総合政策研究センター・かながわ産業労働調査センター」にマップ作成を委託しています。
調査したのは、県内に500人以上の労働者が働き、財務諸表の入手可能な大企業113社(昨年比5社減)。財務諸表が非公開となっている外資系の日本IBM、キャタピラー三菱や、実態が公表されていない大手居酒屋チェーン店などは対象外です。
89兆円の内部留保
2014年3月決算では、113社の内部留保の総額は89兆6260億円で、前年度より3兆9051億円増となりました。従業員1人当たりの内部留保額は、昨年度の1858万円から今年度は1927万円と69万円増えました。企業別で見ると、東燃ゼネラル石油がトップとなり、横浜銀行、東京電力が続きます(表参照)。
内部留保を増やした企業は99社となりました。1年間に1000億円以上増やしたのは、三菱自動車(6815億円)、日産自動車(3706億円)、三菱重工業(3569億円)、キヤノン(2298億円)、富士通(2012億円)など13社にのぼります。
経常利益は、前年比2兆5366億円増の総額10兆8091億円となりました。経常利益を1兆5686億円減らした一昨年から急速に回復しています。
大幅賃上げ可能
ビクトリーマップは、内部留保のわずか0・88%を取り崩すだけで、113社の従業員27万460人に1万円の賃上げ(ボーナスは夏冬で5カ月)ができると指摘。2・6%なら3万円の賃上げが可能としています。
また、仮に県内労働者370万人に1万円の賃上げ(同)をすれば、県内経済への波及効果・生産誘発額は総額5695億円と試算しています。
■ 岡本一かながわ総研理事の話
消費税増税や、円安による輸入原材料の値上げに伴う消費者物価の上昇、社会保障の負担増により、低所得者は5%から6%の賃上げがなければ事実上賃下げになってしまいます。
デフレ脱却、経済の好循環にも賃上げこそが有効であることもますます明白になっています。今こそ内部留保の一部を活用させ、大企業の労働者ばかりでなく、下請・取引単価を引き上げさせ、中小企業にも還元させる。また、国や自治体に中小企業支援策を抜本的に強化させ、すべての労働者が6%以上の賃上げを獲得する春闘にすることが強く求められています。
4月のいっせい地方選挙でも、労働者の雇用と賃金を改善させ、日本経済を回復させていく流れをつくる必要があります。
<内部留保とは> 企業が上げた利益から、株主配当、役員賞与、税金などをのぞき、さまざまな名目で企業内に蓄積しているもの。ビクトリーマップは、「退職給与引当金」「各種負債性引当金」「資本準備金」「連結剰余金」を内部留保としています。